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Pixar front gates
 

エド・キャットムル氏の人柄


 

今週、夜は空き時間にこの本を読んでいました。ピクサーとスティーブジョブズ氏についての話を楽しみに購入したんですけど、結構な量と質なんで、スラスラ読んだという感じではなく、良い意味で重量感ありました。

読み終わった後の感想としては、スルスルとすすれるお茶漬けではなく、噛みごたえのあるステーキだったという感じでた。

「これまで書かれた最高のビジネス書かもしれない」とフォーブズ誌に評され、ニューヨークタイムズ紙のベストセラーリストに掲載されている、というのも納得の読み応えでした。


とにかくこの本を読んで感じるのは、著者であるピクサーの共同設立者のエド・キャットムル氏という人が、凄いなということですね。スティーブジョブズ氏や、ジョンラセター氏の凄さは有名ですけど、このキャットムル氏も相当凄いなと思いました。


キャットムル氏に感じたその凄さについては、本編を読み終わった後の翻訳者のあとがきが非常に納得いったので、その一部を引用させてもらいます。
 

"「翻訳を始めるにあたり、キャットムル氏のインタビューや講演のビデををいくつか見たが、そこには、先進的なクリエイティブ集団トップの尖った感じや、よくある経営者のギラギラした感じはどこにもなく、科学者のような無私無欲さで自説を静かに淡々と語る姿があった。そして、実際に本書からも、科学者らしい、いっさいの思い込みを排除しようとする厳格さ、緻密さ、謙虚さを感じることができる。」"


まさに、この指摘通りの厳格さ、緻密さ、謙虚さ、が文章の至るところから感じられるんですよね。

Pixar
Pixar / Lucius Kwok

 

CGアニメーション実現の夢



キャットムル氏は、元々ディズニーのアニメーターに憧れていたものの、どうすればなれるか分からない中、直感的に、当時新しい分野だったコンピュータ・グラフィックスに賭けたそうです。

ユタ大学院時代には、同級生に、ネットスケープ社の設立者やアドビの共同設立者、そして有名なアラン・ケイ氏もいたそうで、かなり先進的な環境で、将来コンピュータアニメーションを作ることを目標に、日夜色々な研究や発明を行い、当時CGで最先端の技術を発明したこともあるそうです。

しかし、当時のコンピュータの性能では、ハリウッドからもディズニーからも、コンピュータでの映画作りやアニメ作りというのは相手にされないような状態が続いたそうです。

そのような、CGの初期の研究発明段階からの様々な苦労や紆余曲折を経て、スティーブジョブズ氏がルーカスフイルム社から買い取る形でピクサー社が誕生し、これまた紆余曲折を経て、とうとう「トイストーリー」で、彼が20年前から夢見ていた長編のフルCGアニメを初めて制作し、大成功を収めます。

Toy Story Fun Zone
Toy Story Fun Zone / Castles, Capes & Clones


ここまでの段階でも、CGアニメ制作を夢みて20年後に初めてそれが実現した物語として一冊本が書けておかしくないくらいのエピソードなんですけど、この本とキャットムル氏の凄いところは、ここからがまた濃密だということですね。


 

成功を収めた企業の経営者として



この本の後半は、成功を収めてから、大きくなってくピクサーをいかに経営していたか、という話がとても長く具体的に書かれています。

それは、キャットムル氏が、シリコンバレーで数々の企業が成功を収めた後に、やがて誰がみても明らかなミスをして失敗していく事実を目の当たりにして、「どうすればピクサーがこのような事態に陥らないか」ということに、トイストーリー成功後の人生の意義を見出してきたからのようです。

前半がCGアニメの実現を夢みた技術者の紆余曲折成功物語だとすれば、後半は、一度成功を収めた企業の経営者としての経営物語で、テーマはCGの技術的なことよりも、企業組織と組織で働く人間の心へと移っていきます。


Pixar Me
Pixar Me / bogusbong

そして、そのテーマに対する彼の意識の細かさと謙虚さは、こんな経営者そんなにいるのかな?と思うくらいです。
半沢直樹的なドラマが高視聴率を収める日本の現実において、ある意味、逆過ぎて、かなり注目に値するのではと思いました。

また、企業というものは彼が意識する組織ゆえの危険性から、一時期良くても次第に落ちていくのも普通なのかなとも思いました。

彼の経営哲学の一部は、問題は常に起こることを前提に、しかもその問題は見えないで隠れているからそれをなるべく明るみに出し、その問題を社員全員で乗り越えていけるような文化を築いて粘り強く挑戦する、ということだと思いますけど、それを単に口先で言うだけでなく、具体的な制度にも反映させています。経営側にとっても厳しい制度として。

このピクサーに比べたら、ピクサーを買収することになったディズニーも、元々はジョンラセター氏を解雇してたくらいで、既にいかにも保守的な大企業で、個人の可能性や個人の集合としての組織の可能性を十分に発揮できない体制だったのも良く分かる感じもします。


Hollywood wdw


 

本文から一部引用


本文中には、
 

”「本来は効果的であるはずの階層制度が進歩を妨げるものに変わってしまうきっかけは何か」、「上司は上司が聞きたいことを言うのが上手な部下と、チームプレイヤーとを見分けることができるのだろうか」、「リーダーの視界はリーダーにおべっかを使うのが上手な部下に邪魔をされる。」”


などという問題定義が随所に出てきます。


また、その細かさは、見えないものへの意識にも及びます。

 

”「未知の宇宙は、我々の日常や行動に侵入してくるため、否が応でも対処しなければならない」”



巻末には、彼が簡単なスローガン風にすることの危険性について触れつつ箇条書きにしたまとめがあり、その中には、以下のような記述があります。
 

”「組織は、それを構成する個人よりも、集団として保守的であり変化を嫌う。基本合意だけで変化が起こることを期待してはならない。メンバーが揃っていても、グループを動かすには、それなりのエネルギーが必要だ。」”



この本は、彼がピクサー流の厳しさを自らにも適用して、2年の歳月をかけて完成した本だそうで、内容としては、描かれてる事実も、学びにつながる言葉の一つ一つも、かなりの重みを感じました。


ほんの一部を引用しただけですけど、この本には随所に彼の細やかさや賢さや謙虚さが表れています。


CGアニメそしてピクサー社誕生物語としても、ピクサーの個々の作品の制作の裏側の話としても、クリエイティブに限らず一般的な組織の経営のための参考書としても、そしてスティーブジョブズ氏の一面を新たに知る上でも、非常に興味深く価値のある一冊なんじゃないかなと思います。

まだ見た事ないピクサーアニメもあるんですけど、この本を読んだことで、いつか見てみたくなりました。



 

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