- 2017.06.22 Thursday
成功と幸せのための、肉体、感情、頭脳、精神の4つのエネルギー管理
”パフォーマンス、健康、幸福を支えているのは、巧みなエネルギー管理である”
この本では、至るところに名文が沢山出てきて、「良いこと言うよねぇ」という言葉が散りばめられてました。当然全ては紹介しきれないですが、一部引用しつつ、ご紹介していきたいと思います。
”私たちはデジタル社会に生きている。次から次へと押し寄せる仕事の波のなかで、寸断される毎日。熟慮することより、浅く、広く、すばやくが歓迎される風潮。私たちは表面だけをなぞり、いろんなものに首を突っ込むが、一つのところに長くとどまることはめったにない。本当はどんな生き方をしたいのか、どこへ行きたいのかを立ち止まって考えることもなく、一生走り続ける。身動きのとれない毎日のなかで、私たちは自分を見失いつつある”
著者は、プロスポーツ選手のパフォーマンスについて研究してきた人で、最初はテニス界の選手を指導していたようです。少しでもテニスについて知ってる人からすれば、指導してきた選手達は、錚々たる顔ぶれです。ピ ート ・サンプラス 、マルチナ・ナブラチロワ、ジム ・ク ーリエ 、アランチャ ・サンチェス ・ビカリオ 、トム &ティム ・ガリクソン 、セルゲイ ・ブルゲラ 、ガブリエラ ・サバティ ーニ 、モニカ ・セレス。
この中には、彼の指導を受けた後に初めて4大大会での優勝を飾った選手もいたそうです。
その後、他のスポーツ選手の指導も行ったそうで、プロゴルファ ーのマ ーク ・オメ ーラ 、ア ーニ ー ・エルス 、アイスホッケ ー選手のエリック ・リンドロス 、マイク ・リクタ ー 、ボクシングのレイ ・マンシ ーニ 、バスケットボ ールのニック ・アンダ ーソン 、グラント ・ヒル 、スピ ードスケ ートのダン ・ジャンセンという名前が並びます。
さらに、スポーツ界での実績から、ビジネス界等でも請われて幅広く指導するようになった経験を元に、現代人にとっての4つのエネルギー管理の重要性を説いています。
その4つのエネルギーとは、肉体、情動(感情とか心)、頭脳、精神(自我を超えたもの)です。
そして、著者が4つ全ての要素について、共通して重視しているのは、「筋トレ」の発想です。
”エネルギ ーの貯蔵量を増やすには 、トップアスリ ートのようにトレ ーニングのなかで自分の限界を超えて頑張ることを体験する必要がある 。ストレスは人生の敵ではない 。むしろ 、成長の鍵である 。”
”ストレスがかかるのは、そのあとに適切な回復の機会をもつかぎり、成長できるチャンスなのである。 ニーチェが言ったように「人を殺さない程度の不幸が、人をより強くする」”
著者は、あらゆる面のエネルギーを大きくするには、「適切な負荷」と、その後の「回復(休息)」の両方が必要だと、この本全般で強調しています。
”私たちの人生のあらゆる面における「筋肉」──共感能力や忍耐力、集中力、創造性、誠実さ、責任感など──の増強にも応用できる。”
負荷がなさすぎて、そのエネルギーを使わなすぎると退化して衰えていくし、逆に負荷が大きすぎると怪我をしてしまう。肉体、情動、頭脳、精神のどのエネルギーも、適切な負荷をかけて、その後に回復して、、、、という「短距離走の繰り返し」で、徐々にエネルギーを大きくしていこうという発想です。そして、目指す姿は、「フル・エンゲージメント」という状態です。その状態になると、
”肉体にエネルギーが満ち、情動は前向きで、頭脳は正しい方向に焦点を合わせ、精神は目の前の私利私欲を超えた深い目標を見据えている”
という状態になり、公私における成功と幸せが手に入るというわけです。
しかし、
”テクノロジーの飛躍的な進歩によって、私たちの生活はもっとゆとりのあるものになるはずだったが、現実には私たちはいよいよ追いつめられている”
という現代的な状況下で、多くの人が頭脳と情動面ではオーバーワーク気味で、 肉体と精神面ではエネルギーの使用が足りない状態だと著者は指摘します。この本では、公私いずれかでバランスを欠いて問題を抱えてる人達の問題と、その問題を解決していくためになされた工夫が記述されています。
現代人のオーバーワーク的な頭脳と情動面については、著者は休息の重要性を強調しています。まず、頭脳面については、休息が足りないことで、頭脳面でもかえって効率が下がったり、ミスが生まれたりすることは統計上も明らかのようですし、レオナルドダビンチなどの過去の偉大な人は、日中の休息の重要性を知っていて、意識的に休息をとっていたことも彼らの残した言葉から明らかなようです。
ずっとうつむいて長時間作業してると偉いと思われるような傾向のある現代において、あえて、休息を取ることで回復を図る方が、かえって効率も上がるということです。
その他にも、創造のプロセスというものが、左脳と右脳の協働、負荷と休息というバランスによってもたらされている等の指摘もあります。
さらに情動(感情とか心)面についても、成功のためにもとても重視しています。
”最高のパフォーマンスをするには、ポジティブで快適な気持ち──楽しむ気持ち、挑戦する気持ち、冒険する気持ち、よい機会だと思う気持ち──が呼び起こされていなくてはならない。脅かされたり不利な立場に立たされたときに呼び起こされる感情──恐怖、イライラ、怒り、悲しみ──は、特定のストレスホルモン(特に知られているのはコルチゾール)の放出をうながし、パフォーマンスの出来を損なう。”
情動面に関しての回復については、自分にとって楽しんでできる活動を行うことをとても重視しています。
”楽しんでできる、前向きで充実した活動は、ポジティブな情動を刺激する原動力となる。”
また、情動に関しては、一方的過ぎない奥行きも重視しています。
”ある人の情動の奥行きを一番よく表すのは、相反する感情を受け入れる引き出しをどれだけ持っているかということだろう。 (中略)自制心と自由奔放さ、正直さと相手に共感する気持ち、開放性と慎重さ、情熱的な気持ちと他人事のように思う気持ち、耐える気持ちとイライラする気持ち、注意深さと大胆さ、自信と謙虚さなどである”
肉体面に関しては、睡眠、食事、運動を重視しています。詳しい記述まではとてもフォロー書ききれませんが、
以下の記述のように、運動の必要性を重視しつつも、
”つまり、ストレスを少なくしたり避けたりするのは、回復の機会を持たずにストレスを受けすぎるのと同じくらいよくないことなのである。(中略)医学的にどんな状態にあっても、ベッドで寝ている期間が長いことは、患者にとって特にメリットがないことがわかった。むしろベッドで寝ていると回復が遅れる傾向があり、場合によってはかえって状態を悪化させることもあった。これは、ベッドでの安静が長く勧められてきた病気、たとえば腰痛や心臓発作からの回復期、急性伝染性肝炎などの場合にも当てはまった。”
その上で、以下の記述のように、休息の必要性も説いてる点が、極めてこの著者らしいです。
”NASAの疲労対策プログラムでは、たった四〇分間の仮眠でパフォーマンスが平均三四%、覚醒度は一〇〇%アップしたという結果が出ている。ハーバード大学では、一日を通してある一連の作業をおこない、その成績を比較する研究をおこなった。すると、成績が五〇%も落ちてきた被験者たちを対象に、午後早くに一時間の昼寝をさせたら、一番高い成績レベルまで完全に回復したのである。 ”
要するに、適切な負荷をかけつつ、休息もきちんと取ろう、という理論です。
休むことを嫌がるクライアントに対しては、超一流の成績を残してるスポーツ選手は、そうでない選手よりも、明確にプレーとプレーの間に短時間で休息・回復の時間を取っているというデータを示すと効果があったようです。
さらに、この本が素晴らしいなと思ったのが、「精神」面の重要性を強調してる点なんですね。
最初この本で、情動と精神という記述が出てきたときは、どう違うのかよく分からなかったのですが、「精神」の記述を見たらよく分かりました。ここでいう精神というのは、自我を超えたものを指していてて、例えば利他的な精神や、宗教的な瞑想等の効果を挙げています。これは、ある意味自分がとても体験してきた領域の話ですからよく分かります。
「情動」というのが個人的な感情的な面が強いものなのに対し、「精神」というのは自我を超えたもっと深く広いもので、それこそスピリチュアルとかなり近いものという区別なわけですね。以下の記述もその違いをとてもよく記していると思います。
”人生は私たちに何を期待しているのか 精神面の許容量を増やすには、私利私欲を超えた何かのために自分をある程度犠牲にすることが必要となる。私たちはたいてい自分優先で物事を考えているので、自分から目を離そうとすると、「自分の存在自体が危うくなるのではないか」という強い不安を覚えることもある。(中略)皮肉なことに、自分のことばかりにかまけていると、そのうちエネルギー切れをおこし、うまく実力を発揮できなくなってしまう。自分のことで頭がいっぱいであればあるほど、積極的な行動を起こすために必要なエネルギーが涸渇するのである”
利他の精神や信仰心という、個人の打算や思惑を超えたエネルギー源があることは、スピリチュアルの基本でもあるかと思います。そして、そのエネルギー源が、時に自我よりもエネルギーとして強いということも著者は重視していますし、自分もそう思います。
”成長や発達は、肉体から情動、そして頭脳から精神へという、下から上へのプロセスをたどるが、変化は逆のプロセスで、精神から波及していく。自分が一番大切だと思う価値基準を思い、私利私欲を超えた使命感を感じるときに得られる精神のエネルギーが、目標に向かって進むときの非常に強い力となる。目標があれば進むべき方向も決まる。その目標をめざしてどこにエネルギーを注ぎ込めばいいかもはっきりする。だからこそ「フル・エンゲージメント」の状態になれるのだ。目標は人を元気にさせる。背中を押してくれる。勇気づけてくれる”
また、「精神」的な消費と回復の取り組みに関しては、特筆すべき特徴もあることも指摘されています。
”精神面のエネルギーの消費と回復は、他のどの面よりも互いに深く関連しており、同時に起こる傾向がある。たとえば瞑想は、心を静めるために高度な集中力を必要とするが、心が広く解き放たれ、人生において何に価値があるのかを深く思いめぐらすことでき、ときに喜びさえ感じられる回復の時間でもある。ヨガと同じく、瞑想はあらゆる面に影響を与え、精神面のエネルギー量を大きくする作用があると同時に、頭脳面と情動面の回復にもなる実践である。 同じように、祈りも集中と黙想の努力を必要とする一方、情動と精神を癒す効果がある。”
まさに最近その効果が注目されてるマインドフルネスの有効性に関する記述のようでもあります。
実際に変化を起こしていくためには、まず目標を設定し、きちんと自分自身を見つめることを重視しています。
”目標は、次の三つの変化を起こすとき、エネルギーの源泉としてより力強く、ねばり強く私たちの生活を支えてくれるようになる。一つめは、目標の生まれた理由がネガティブなものからポジティブなものへと変化するとき。二つめは、目標が付帯的なものから本質的なものへと変化するとき。三つめは、目標が自分に対するものから他者に対するものへと変化するときである”
”精神科医エドワード・ウィトモントは次のように述べている。「人は自分が『こうありたい』と思う自分や『たぶんこうじゃないか』とひいき目に解釈している自分ではなく、本当の自分の姿を見てショックを受けたとき、初めて真実の自分に近づく第一歩を踏み出すことができる”
さらに、具体的な変化のために、習慣的な儀式を重視しています。これも極めて現実的な判断ですよね。毎回、「よっこらせ。さて何やろうか。」という意思や思考の力を使っていたら、それだけで有限のエネルギーを消費してしまいますし、実際にそういう実験結果についても書かれています。
わざわざ意思や思考の力を使わないレベルにまで習慣化して、エネルギーを消費しない形で変化を実現しようということです。習慣化したら潜在意識レベルでの自然な行動にもなりますから、持続性も大いに期待でき、これもとても理にかなってると思います。
”ポジティブな儀式には、三つのメリットがある。第一は、自分の目標に向かっていくための効果的なエネルギー管理ができるように助けてくれること。第二は、人間のもつ限られた意志の強さに頼る必要性を減らしてくれること。第三は、自分が心のなかにもっている価値基準を実際の行動に反映させる強力な手段となることである。 ”
儀式という言葉が使われてますが、実際には日々のちょっとした習慣で十分のようです。例えば、怒りが原因で失敗する人は、イライラしたら腹式呼吸をするとか、あえてちょっと微笑んでみるとか(笑いながら怒ることはできないから。)
ただ、過去の習慣と異なることを簡単に直ぐには習慣化できないので、習慣化するための工夫も重視されています。
”なかでも重要なのは、儀式を定着させる時期である最初の三〇〜六〇日の間に、「いつ」「どのように」儀式をおこなうかという細かい部分をきっちりと詰めることだ”
”成長や変化は、自分にとって快適な領域を超えなくては望めない。しかし、あまり無理をすると途中でやめてしまうことになりかねない。それよりも徐々にハードルを高くして、各ステップごとに達成感を得て進んでいく方がいい。自信がつけば、もっと厳しい変化を求めていく忍耐力もできる。私たちはこれを「儀式の連続効果」と呼んでいる”
この本が一番重視している「エネルギー」という面では、こちらはさらに細かく、エネルギーバンパイア対策とか、その他色々なスピリチュアル的な要素もとても重視しているんですが、
明らかに生活の中でのアンバランスさ等が原因のケースに関しては、この本に書かれてることはかなり良い内容だなと思いました。
特に、精神のエネルギーを最重要視して、価値観を明確にし、そこから具体的現実的に日々の習慣的な儀式にまで落とし込んで、日常生活の中で、着実に変化を目指しているところが良いですね。
組織レベルでのエネルギーに関しても書かれており、組織のエネルギーに与える影響も大きいとされる管理職の人にもお勧めです。
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- by watarai9